2014/12/18

[電子工作]mbedを自分のボードでも使いたい

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 mbedを自分のボードでも使いたいなと思って、ちょっと調べていたりします。

参考

FAQ (Japanese) | mbed http://developer.mbed.org/users/nxpfan/notebook/faq-japanese/?c=9174
mbedを他プラットフォームで使えるかについて、公式のQ&Aです。これに依れば、
『Quote: mbedでコンパイルしたコードは他のハードウェアでも動作する?

動作します!
mbedコンパイラはARM社が提供するRVDS(RVDSについては次の項を参照)を使用しており,このコンパイラはLPC1768やLPC11U24等のmbedコンパイラがサポートするMCU(ベア・メタル)上で,単独で動作するコードを生成します.』だそうです。

mbed-src http://nora66.com/mbed/mbed-src.html
mbedのライブラリについて。あんま書いてる人がいない。


lpc810_helloworld - a mercurial repository | mbed http://developer.mbed.org/users/va009039/code/lpc810_helloworld/
LPC810でmbedを利用する方法が書かれています。

LPC810のmbed化 - densikit.com and the arduino variants http://arduino.densikit.com/jikken-shitsu/lpc810
上に同じ

Using mbed with generic STM32 boards from eBay | mbed http://developer.mbed.org/users/shutay/notebook/using-mbed-with-generic-stm32-boards-from-ebay/
自分の作ったSTM32ボードで、mbedでコンパイルしたコードを動かす方法について。やはり、mbedのドラッグ&ドロップは使えないようですね。
※STM32 nucleoでは、USBとの通信はすべてST-Linkが担っています。なので、ターゲットMPU単体だけだと、D&Dなどは使えないみたいです。


[lang:ja] mbed LPC1114での遊び方 | mbed http://developer.mbed.org/users/ytsuboi/notebook/getting-started-with-mbed-lpc1114-ja/
mbedを自作ボードで使う一番楽な方法は、多分DIPのLPC1114を利用すること…なのでしょうかね?LPCXpressoのLPC1114ボードでも利用できるので、あれが多分回路的に一番単純でしょうから、その回路を真似るのも手なのかな。
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2014/12/15

[電子工作]ハンダゴテRX-802を買った。あとFX-951との比較。

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 ハンダゴテを買い替えたお話です。

 今までハンダゴテはgoot CXR-41(30W)を利用していました。しかし、熱容量不足でベタパターンになっているGNDに繋がるピンがまともにハンダ付け出来なかったり、はんだ吸い取り線をまともに使えないなどの問題がありました。
 そこで、自作基板に表面実装を使うようになってきたこともあって、温度コントローラー付きで高性能なものを買うことにしました。

 まず、ハンダゴテを作っているメーカーは、私の知っている有名所では

  • Hakko
  • 大洋電気産業(gootブランド)
  • hozan

です。海外のメーカーですとWellerなどもあるようですね。

 このあたりで探していたところ、Hakkoの「FX-951」と、gootの「RX-802」辺りがちょうどマッチするかなと思いました。

FX-951とRX-802の違い

次に、これらを比較してみたのですが、正直言ってどちらも似たようなものな気がします。…と、これではまとめにならないので、2つの製品の違いを書き出してみました。

FX-951にあるもの

  • こて台のコテを検知して、スリープする機能
  • ESDセーフ(RX-802にもあるのかも?)
  • ド派手な、どこでも目立つ見た目

RX-802にあるもの

  • こて台に、クリーナーとして、スポンジとメッシュ金属の両方を置くことができる
  • 温度変化時に、温度表示がFX-951より細かく出る

 値段ですが、この記事を書いた時は、AmazonでRX-802が\20,173、FX-951が\24,800でした。RX-802の方がちょっと安めですね。

 立ち上がり時間はやはりRX-802の方に分があります。RX-802、本当に直ぐ使えるようになります。実測で、RX-802(9s) > FX-951(16s)でしょうか。FX-951に関しては以下の動画で立ち上がり時の様子を見ることが出来ます。

 DigitalThis - Hakko FX 951 review: http://youtu.be/PeKWE4RZl2g via @YouTube

FX-951を使ってきた

実は、FX-951は秋葉原にある「はんだづけカフェ」で利用することが出来ます。実物を触らないで購入するのも怖かったので、実際に行って使ってきてみました。で、実機の感想としては

  • こて台にコテを挿すとスリープする機能は、むしろ不便。なぜって、一々温度がスリープ時の設定値にまで落ちるから。途中からコテ検知するコード抜いて使ってた。
  • RX-802に比べると、立ち上がりが遅い。そして、温度表示が更新されるのが秒間2回とかなので、かなり離散的で滑らかでなかった。

といったところ。正直、思っていたよりも期待はずれでした。RX-802の方が総合的な完成度が高いかな…。


 それで、結果的にRX-802をAmazonで購入しました。そうそう、買うときは専用のこて先も一緒に購入しましょう。本体に付いてないんですよね…。

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[電子工作]Eagleあれこれ その2

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 Eagleについての個人的なTipsなどをまとめました。位置付けとしては、「Eagleあれこれ」という記事の続編です。

 Eagleのバージョンは、今のところ7.1.0が最新のようです。ちょうどこの前このバージョンにアップデートしたので、この記事では7.1.0を使っているとして、話を進めます。

 あっちなみにまだ書きかけです。

Libraryで、複数ピンの割り当て

「1ピンと2ピンがGND」みたいなICのライブラリを作成する時、回路図上ではGNDは1つのピンとして描き、ピンの割り当てで2つのピンをGNDにする時に使います。
 前からあったんですかね?Ctrl押しながら複数のピンを選択出来ました。
回路図では1つのPinに、2つのPadを割り当てるとき。Ctrlを押しながら、2つのPadをマウスで選択します。
こんな感じになります。Padの数字の左側に、繋がってるマークが出ます。
回路図上では、このようなシンボルになります。(PGNDに「1*2」と書かれる。)

Test Pointを設けよう

テストポイントと言うのがあります。テスターやプローブを当て、電圧や信号が正しく出ているか確かめるための場所です。自分が電圧をチェックしたい配線や、ほとんど露出してない信号線などに明示的に配置すると便利です。「testpad」というライブラリの「/TP/TPTP06R」や、「SparkFun-Passives」の「/TEST-POINT/TEST-POINT2」などがそうです。
test pad

回路図上のtest pad
実際に配置したtest pad

 特に、GNDやVccなど、動作確認やデバッグの際に利用しそうな配線には、予めオシロスコープのプローブを引っ掛けられるようなピンを用意しておくといいと思います。マックエイト社製のものが有名です(少々値は張りますが…)。GNDは、何箇所かチェックピンがあるとなおよし。

Polygonに優先順位(Rank)を付ける

Polygonは、「囲った領域をパターンなどで埋める」機能です。ベタグラウンドのためによく使われます。ですが、ベタグラウンド以外にも、DC-DCコンバータ周りのVccなどをポリゴンで描きたいときもあります。この時、Rank付けをしないと、下の図のように、2つのポリゴンが重なってしまいます。
Rank付けしない時の、Polygon同士の重なり。下の図と比較すると、VccとGND間にあるべき隙間が塗りつぶされたことが分かります。

 GNDのRankを"6"(最低)にして、VccのRankを"1"にすれば、ベタグラウンドはVccのPolygonがあるところを避けて塗り潰してくれます。

Rank付けした時の、Polygon同士の重なり。Rankが低いベタグラウンドが、VccのPolygonを避けています。
参考 : パターン図作成のテクニック (8) Polygonに関しての説明があります。

外に出す部品(コネクタ、LEDなど)は、なるべく大きなグリッド上に配置する

これはマイルールなのですが、外に出す部品は、なるべく大きなグリッド上に配置しています。これは、外のケースに穴あけをする際に、2mil単位などだと分かりにくすぎて間違えそうなためです。

 Eagleならまだ良いのですが、ケースの穴あけ図を別のCADで書くとき、統一されたグリッド上にあるほど楽な気がします。間隔なども規則正しくないと気持ち悪いですからね。

 今のところは、
  • 外に出す部品を、50milのGrid上に配置する。(100milだと少し不自由すぎるから…)
  • 電源線を引く。電源は、1Aで1mm(≒ 39.4mil)くらいの幅を必要とするので、後から引くのが大変。
  • 細かな部品配置と、信号線を引く。
という流れでやっています。

電源ライブラリについて

昨今の基板で電源系統が1つだけなんて珍しい気がするんですが、Eagleの場合、デフォルトのSupplyライブラリにあるのは"Vcc"とか"VccIO"とかくらいですよね。そもそも"Vcc"って名前は情報量少ない気がするので"Vcc_3V3"とかにしたいけれど、どうやるんだろう…と思ってたら、以下のような記事がありました。やっぱり自分で作らないとダメなんですね…
 余談ですが、Protelという電気CADがありまして、これだと電源名が自由に変えられるんですよね。Eagleの場合、アイコンにある名前が固定なので、ちょっとつらい。

2006-09-23 - Blackfin空挺団::Blog http://d.hatena.ne.jp/suikan+blackfin/20060923

回路はなるべく機能別に分離できるようにする

プログラミングだと、機能別に関数に分けたりすることで、それぞれの動作確認(テスト)をしたりしますよね。あれと同じで、ハードウェアでも機能別に分けられると、デバッグが楽です。大体の基板は一発で動かないような気がしますし…デバッグの手段を設けるのは重要だと思っています。

 大規模な回路だと、「表示部」「アナログ部」「MPU部」などを別基板に分けて、それらを基板対基板ケーブルで接続するというのも分離する方法のひとつのように思います。
 が、私の作る基板はそこまで大きくはないです。私の場合、「ソルダージャンパのパターンで電源を分離する」ようにしています。電源をOFFにするだけでも、その回路は動かなくなりますからね。ただ、この場合は他モジュールからの信号の影響も考えないといけないですが、小規模回路なら十分なような気がします。

 ちなみに、「外す可能性がある」ところにはピンヘッダ+ジャンパピンを利用し、試験以外の時には接続している前提ならば、0Ω抵抗やソルダージャンパのパターンを使うような区別もしています。


!他のライブラリを信用しない

自分のライブラリを作

ライブラリが豊富なことは、Eagleの魅力の一つです。が、それとは相反するような話です。どうしてこんなことをするのかというと、以下のような理由のためです。
  • 推薦フットプリントが、会社ごとにびみょーーーーーーーに違ったりする(ex. SOT-23)。
  • シルクの統一
  • プレフィックス(prefix)の統一
 同じパッケージのフットプリントでも、「リフロー用」か「ウェーブ用」かといった違いがあります。また、手半田する場合、リフロー用のフットプリントですと、ランドの大きさに余裕がなくて少し大変だと思います(私はいつも大きめにしています)。ですので、結局ちょっと手を入れることになったりします。

 シルクの統一についてですが、マイルール『基板のシルクでは、部品の「>VALUE」は要らない。「>NAME」は40milでfontはvector』があることが理由です。
 ほとんどのライブラリでは、設定がデフォルトの「50mil、proportional」になっています。これを、いちいち[Smash]→[Info]で変えていくのは煩わしい手間です。なので、予めシルクを変更したライブラリを用意しておいたほうが楽なんです。特に、部品点数が多くなる抵抗やコンデンサではこの必要性を感じます。

 プレフィックスも統一したいですね。例えばICは「IC」、「X」、「U」など様々ですし、可変抵抗は「VR」とか、トランジスタは「Tr」(自分はあんま好きじゃないけど)とか、文句をいうと際限がないです。プレフィックスが問題になるのはBOMを出力したときで、同じICでもプレフィックスが違うと、ソート出来ずに、リストの飛び飛びの場所にICが書かれていたりしてしまいます(多分)。なので、プログラミングでの命名規則のように、プレフィックスも統一したいんです。

参考


Cadsoft Eagle tips and tricks - DP http://dangerousprototypes.com/docs/Cadsoft_Eagle_tips_and_tricks

HOW-TO: Polygons and ground fills for PCBs in Eagle | Dangerous Prototypes http://dangerousprototypes.com/2012/07/18/eagle-polygons/
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2014/12/14

[電子工作]Friskケースに入るUSB-UART変換器を作った。

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タイトルに記しました通り、Friskケースに入るUSB-UART変換器を作りました。


外観
 写りが悪いんですけれど、こんな外観をしています。
 いつもブレッドボードなど試作時に利用する電源がなくて困っていたので、電源としても使いやすいよう、5V、3.3V、1.8Vのピンをそれぞれ2本ずつ用意しました。


 回路図とパターンを以下に示します。FTDI社のUSB-UART変換チップを利用した回路なので、特にひねったところはありません。敢えて言うなら保護回路かな…?
回路図
 回路図上では、74LVC1T45はNXP社製のものを指定していますが、NXP社のものはサイズがSC-70だかしかなく、パターンはSOT23-6で作っているので困ったことになります。TI製のもの?を利用しましょう。
 まあ、ギリギリ変換基板など利用せずともハンダ付け出来るんですけどね(上の写真みたいに)。

 電源には、TIのLDO、TPS736xxシリーズを利用しています。外付けコンデンサが必要ないこと、低ノイズが売りです。アナログ回路にも利用するかなあと思い今回使ってみました。が、単価が高いのがいかんともし難い欠点です…。
 今はLTC3406やLM26420みたいに省スペースの高効率降圧DC-DCコンバータICが沢山世に出ていますので、それを使うのもいいかもしれませんね。ノイズが気になるなら、DC-DCコンバータのあとLDOを使えばいいですし。

 ピンヘッダの部分には、不定入力にならないようプルアップ抵抗を入れていますが、プルアップする先が正しいのか今でも謎です。
 入力保護のダイオードは、小型ショットキーバリアダイオード(SBD)です。静電気から守ってくれると信じてます。

 今回は回路図の情報量をなるべく多くして書いてみました。例えばコンデンサ1つにしても、耐圧・大きさ・温度変化指定なども記入するようにしてみました。記入方法に関して、他の方の回路図を見ると結構まちまちなのですが、私は情報量多めの方針で行こうかなあと思っています。ただ、統一しないと部品リスト(BOM)で別の値となってソートできなくなってしまうので、今回は「容量/耐圧/温度変化(サイズ)」としています。

 拘ったものというと、2色LEDでしょうか。青・赤の色の組み合わせは、製品ではなかなか見ないのですが、結構綺麗ですね。使ってよかったと思います。やはり光るものは視て分かりやすいですし、変化も愉しいですから。

表面のパターン
裏面のパターン

 Eagleのデータも保存目的にリンク貼りたいところですが、GitHubは無償ライセンスだと登録できる件数に限りがあること、blogger自体はファイルのアップロードが出来ないことから、可能性を示唆するに留めておきます。
 いつかは上げたいですね(…!)

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2014/09/15

[登山]南アルプス南部(三伏~荒川~赤石~聖~椹島)の登山記(5~6日め)

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 南アルプス南部に登った時の記録です。0日め~2日めについてはこの記事に、3~4日めについてはこの記事に纏めてあります。

5日め


兎岳避難小屋を出発して聖岳へ登り、聖平へ。天候にめげて下山を決意、その日のうちに椹島へ。
兎岳避難小屋→聖岳→小聖岳→聖平→滝見展望台→聖沢吊橋→出合沢小屋跡→登山口→椹島

兎岳避難小屋~聖平

5日めの朝。兎岳避難小屋の中を掃いて片付けたら出発です。この日も一面のガス、朝は雨がパラついているという生憎の天気でした。が、前に進まないと帰れないので…心を無にして歩いていきます。

 ヤマケイの地図ですと、兎岳~聖岳の間には、危険マークの付いた場所が2箇所程あります。ですが、曇っていたことも相まって、歩いてみた限りだとそこまで危ないと思う場所はなかったです。確かに、赤石岳の辺りからこの稜線を見ると、アップダウンが激しい痩せ尾根に見えますし、実際長野側は「聖岳大崩落地」として大きく崩れています。

 森林限界を越えたり越えなかったりしながら、よく刈られた草木の間を登っていきます。霧で終わりが見えないので、「そろそろだし、これが頂上か…?」などと考えると見事に裏切られます。GPS見てた方が幸せになれる区間です。
 
 時々崩落地の際を登山道が通るので、赤色チャート(ラジオラリア)が鮮やかな暗赤色になっているのが見えたりします。チャートというのはプランクトンの死骸が堆積して出来た岩のことで、それが3000m近くまで地殻変動で運ばれてきたわけですから、中央構造線の近くにいるんだなあと感じさせてくれます。他の山々からすると結構どぎつい色をしていて、確かに赤石山脈だなあと納得してしまいました。

 ハイマツ帯から砂礫地のようになってしばらくすると、突如山頂に出ました。あれほどまだかまだかと思っていたのに、最後は呆気なかったです。アルプス最南端の3000m峰で、ちょっと空も明るかったのですが、相変わらずのガスで何も見えず。

 奥聖岳は時間の都合もあってパス。下山のために聖平小屋へと進んでいきます。聖岳からの大斜面は結構急で、登りたくはないなあと思わせてくれる道です。しばらくすると平坦な稜線歩きとなり、小聖岳を通過すると、またどんどん下っていきます。そして灌木帯に戻ってくると、道は雨に依ってぬかるんでいるようになってきます。
 この辺りの登山道は、時々単調な草原のような場所に出るくらいで、鹿害の痕なのかなあと考えてしまいました。

 結構長い時間歩くと、薊畑というところに付きます。と言っても、これも鹿害のせいなのか、名前は「薊」畑ですがあまりアザミはなかった気がします。ここに、西沢渡方向への分岐があったように思います。

 そこからしばらくすると、突然開けた場所に出ました。ここが聖平。聖沢の下山ルートか、上河内岳・茶臼岳方向に進むかを選ばないといけません。無論全員一致で下山することに。木道が整備されていて歩きやすかったです。

 小屋が見えてくると、左側に鹿がいました。目線が合いましたが、自分よりも大きく見えたので、早歩きで横を通りすぎました。聖平小屋で一旦休憩することにしましたが、小屋の入口を見るとなんとフルーツポンチが。お金取られないの…とびくびくしながら頂きました。しばらく食材の豊富な食べ物とは無縁だったので、それこそ身に沁みるような美味しさでした。

 さて、この小屋ではカレーと中華丼が500円で食べられます。他と比べると安すぎですね。勿論食べようということになり、食堂に上がらせて貰いました。小屋の人が「勿論大盛だよね?」「フルーツポンチ実は余ってるんだよ、食べないなんてことは…ないよね?」みたいな感じで、色々とたくさん食べさせてくれたのが嬉しかったです。その御蔭で、山で今迄にないくらいお腹いっぱいになってしまいました。(実際、この後下山まで何も食べずに過ごせた。)

 他に聖平小屋のいいところ(?、驚いたこと)としては、なんとトイレが洋式水洗だったこと。こんな所あるんかい!とツッコまずにはいられないほど、清潔感あふれるトイレでしたね。電波が通じないのが玉に瑕なんですが、今度行くなら是非泊まってみたい場所です。

聖平~椹島

休憩でリフレッシュしたら、下山し始めます。ここからは暫く沢沿いに歩いていきます。あまり高度も変わらないので、時間を縮めようと頑張ってみましたけど、ぬかるみに苦戦したりして、結局ほとんどコースタイム通りでした…。

 同じような樹林帯を飽きるほど見て、少しだけ登ると「滝見展望台」というところに出ます。慰霊碑がありました。この場所から聖沢までは、地形図だと100mくらいの高度差があるのですが、「展望台」ですのでそれを岩の上から覗けるという、なんとも高度恐怖症殺しの場所でした。

 更にトラバース道を延々と歩き、大きな沢を跨ぎます。聖沢はもう遙か下に行ってしまい、「吊橋までこの高低差を下るのか…」と、後々のことを考えて段々憂鬱になってきます。乗越という場所で尾根を跨ぐと、営林小屋跡までは緩い下りになります。そしてそこを過ぎると、聖沢吊橋まで、250m以上の怒濤の下りとなります。

 聖沢吊橋は大きな吊橋で、土台もコンクリートでしっかりと造られていました。あんな山奥に誰が運んだんだ…と言いたくなります。
 実は聖沢の登山道は他にも橋が幾つかあって、どれも頑丈そうな金属製のものでした。果たして採算取れるのか勘繰ってしまうくらいに、よく整備されています。

 聖沢からはまた沢の高巻きが始まります。ここに限らず、沢の高巻きは結構危ない場所の一つだと思うのですが(支流の沢に落ちると、多分本沢まで止まらなさそう。の割に数十m程の差がある)、出合沢小屋までのトラバースはずっと手すりが付いていて、あまり緊張せず歩くことが出来ました。

 出合沢小屋には道標があって、古い瓶などが転がっていました。ここを過ぎると、林道までまた200m程度の急な下りです。木々の隙間から赤石ダムのエメラルドグリーンが見えてくるようになると、少しして林道に出ました。

 さて、林道ではあるのですが、ここを下界と思っていると大変なことになります。なにせ静岡県の最奥部ですから、バスですら井川まで2時間以上かかる場所です。その日の下山は無理で、椹島へ行くことにしました。

 林道歩きは…特にコメントすることはないです。赤石沢と東沢がとても近いところを流れている牛首峠の地形が面白かったのと、椹島の近くで雨に降られて「とことんツイてないな…」と思ったくらい。

 椹島は、何棟も建物が並ぶ、「一見すると」集落みたいな場所です。車も何台か止まっていますし、建物も下界のように綺麗です。山奥なのに。流石は東海フォレストの拠点だなあといった気がします。

 テント場は一人\1,000と少しお高めでしたが、なんとお風呂に入れます。建物の中にはテレビやPC、ソファなどもあって、山の上からしたらすこぶる快適でした。他にも自炊場や自販機まであって、なんだここは…となってしまいます。テント泊なのに。テント泊なのに。テントサイトは芝生の上なので、久々に柔らかい所で寝れると思った記憶があります。
 唯一の問題は、電波が全く入らないというところですね。

まとめ


  • 森林限界より下では、雨が降ると道はぬかるむ。
  • 聖平小屋はフルーツポンチが食べられる(1人1杯)。カレーと中華丼が大盛り無料で500円。トイレは洋式水洗。docomoの電波は入らない。
  • 西沢渡・便ヶ島~聖平の登山道は蛭が出る、らしい。
  • 聖沢登山道はよく整備されている。ただ、上の方のトラバースでは、ところどころ支えの木が腐りかけてる場所とかがある。
  • 椹島は、テント泊でもお風呂が入れて、自販機やレストハウスがあり、1台だけだがノートPCでインターネットも見れる。でもdocomoの電波は入らない。衛星通信の公衆電話はあるけど、50秒200円とかそんな感じで高い。

兎岳避難小屋の道標あたりから見た小屋
時々こんなところを行きます。
真っ赤なラジオラリア盤岩
ポスターにも載っている、ラジオラリア露岩地です。
こんな所を延々と登っていきます。
そこらの石
頂上はもうそろそろのはずですが、眺めが無いので全く分からなかったです。
山頂に着きました。展望ゼロ。
隣にこのタイプの道標もありました。
聖岳からの下りで、一瞬迷った場所。右が正解。
切れ落ちているんでしょうかね。よく見えませんでした。
小聖岳です。山頂標がありましたが、文字はかすれてほとんど読み取れませんでした。
薊畑までは、時々こういった場所を通り抜けます。鹿害でこのような植生となったのでしょうか。
縦横間違えてますが、鹿の嫌いなトリカブトです。食べると人間も死んじゃうんですよね。
薊畑にあった西沢渡への分岐。崖っぷちに立っている。
薊畑の道標
ここは薊畑です。これが無かったら分からなかった。
聖平。
聖平の分岐を示す道標。
このような木道が整備されています。
木道
小屋のすぐ近くにいた鹿。自然の中で鹿を見るのは人生3回めかな。こいつを担いで帰れれば、ジビエが食べられますね。
聖平小屋で食べた中華丼。うずらの卵がとても美味しい。実はこの小屋には冷蔵庫があるらしい。
聖平小屋に貼ってあった時刻表
便ヶ島への登山道には蛭がいます。小屋の人の話では、蛭のいる場所にザックを置くと、背負った時に体に付いてくるらしい。
カレー500円。南アルプスの小屋は良心的な価格帯ですね…(ペットボトル300円、カロリーメイト200円とか)
これが聖平小屋です。
小屋の前にあった、聖平植物復元活動の説明板
暫くはこんな道を歩きます。トリカブトだらけでした。
耐荷重400kgの金属の橋も、こんな感じで盛大に曲がってました。
おそらく滝見展望台から下を覗いてみたところ。むっちゃ深くて怖い。
踏みたくない木道
聖沢吊橋ではないけど、こんな立派な吊橋が山の中にいくつかあった。
営林小屋跡か。
出合沢小屋跡
出合沢小屋跡の道標
赤石ダムのエメラルドグリーンが見えてきました。
聖沢登山口です。
椹島はこっち。
畑薙第一ダム方向。歩くと何時間もかかるけど。
こういう桟道のような道を見ると、なぜかワクワクしてしまいます。(発電所か何かの管理道です。)
牛首峠近くにある、赤石沢川の看板。
歩いて行くなら、この看板から登山道を抜けたほうが早いのかもしれない。
椹島にも、おなじみの道標があった。
レストハウスかな?
椹島ロッジ別館。写真の建物が受付になっている。
こんな感じの建物がいくつか並んでいた。
南アルプスの地形についての説明板。これを見てから登ったほうが、いろいろと楽しいと思う。
今回見れたのは、牛首峠と赤崩くらいかな。
これも地質学的特徴の案内板。
兎岳~聖岳のラジオラリア盤岩露岩帯の写真。ちょうど上の写真と同じ場所だった。

6日め

この日は下山です。「狭い日本なのに、街に出るまでこんなに時間が掛かるなんて」と、自分たちが山奥にいたことを分からされます。


 朝起きると、送迎バスに乗り込みます。自分たちが昨日何十分もかけて歩いたところを、バスは15分位で走り抜けてしまいます…。バスはひたすら東俣林道を下りていくのですが、いつまでたっても「大井川とそれを囲む山」という風景は変わりません。これが1時間続きました…。右側に畑薙大吊橋が見えると、すぐに畑薙第一ダム湖が出てきます。そうするとしばらくして沼平ゲート、ダム堰上を通り、畑薙第一ダム駐車場に着きます。バスで1時間ですから、歩いて帰るのは無謀に近いですね、テント泊にはなかなかつらい山域だと思います(椹島、二軒小屋を使うのが)。

 さて、実はここからの交通手段を考えていませんでした。というのも、東京に帰らねばならないので、まずは大井川鉄道の井川駅にたどり着くべきだと考えていました。しかし、井川までのバスは白樺荘止まりとなってしまったので、バスが無いんです。この辺りで電波が入るようになったので、タクシーを呼ぼうかとなったのですが、タクシーは静岡市街から来るとのこと。なので、採算の問題から、静岡市街まで行かないなら来ないといいます。しょうが無いので、バスの出ている赤石温泉白樺荘まで歩くことにしました。

 白樺荘は綺麗なところでしたが、バスまで3時間待ちは、暇すぎて辛かったです。休憩室で沈黙の艦隊読んでました。あと、マムシの干物とか売ってました。

 バスは9人乗り、HPだと「町民優先」をでかでかと書いていたので、乗れるかおっかなびっくりでしたが、白樺荘で乗車した5人以外に乗ってくることはなかったです。それに、バスの中には「人数が多い時は田代から増便を出すので、10人以上のグループは連絡ください」との但し書きがありました。

 途中自衛隊の車とバイクが、何台も畑薙第一ダム方向に向かっていったんですが、何かあったんでしょうかね。

 井川からは、5分の乗り継ぎで大井川鉄道井川線に乗ります。アプト式のトロッコ風列車なので、観光客が大勢乗っていました。私も車窓を最初は楽しんでいたんですが、あのディーゼル機関車の轟音と、変わらない山奥の風景にだんだん飽きが来てしまいました。今考えると、静岡までタクシーのほうが良かった気もします。

 2時間電車を乗り続けて、やっと千頭というところに着きます。ここもまだコンビニのない町なのですが、SL列車の終着駅だけあって、家族連れで賑わっていました。しかし、問題は千頭から先にもあって、この区間は列車が昼間は3時間に1本とかなのです。しかも、浜松に近い金谷まで行ってしまうので、東京に帰るためには少し不都合です。
 ちょうど駅前のタクシーを見ると、静岡駅まで1万円程度と書かれていたので、ここからはタクシーで帰ることにしました。実はこの時お金の持ち合わせが無くて、途中コンビニに寄って貰って下ろしてくるという、なんとも恥ずかしいことをしてしまいましたが…。

 タクシーもずっと山の中を走ってきましたが、新東名を超え静岡の市街地まで来ると、一気に都会になりました。運転手さんは、映画館がもう1つもないんだと嘆いていましたが、やっぱり都会です。コンビニとかも沢山ありますし。そうそう、静岡は横断歩道がふじさんの歌なんですね。

 その後静岡でとんかつを食べ、青春18きっぷで帰りました。

まとめ

  • 椹島はとても山奥。畑薙第一ダムも山奥。
  • 畑薙第一ダム~椹島・二軒小屋は小屋宿泊者のみが乗れるバスが有る。しかし、畑薙第一ダム~聖岳登山口はまた別のところのバスが有ったような。
  • 畑薙第一ダム~白樺荘間はバスがない。しずてつシャトルバスによる畑薙第一ダム~静岡駅の季節運行バスが、1日1本だけある。
  • 白樺荘~井川は、バスが1日2本。9人乗り、町民優先。でも、増便を出してくれそうかもしれない。
  • タクシーを井川・畑薙第一ダムなどに呼ぶ場合、静岡市街地までじゃないと来てくれない。
  • 大井川鉄道は、井川線に至っては5本/dayとかで、あまり早いものでもないので、よく考えて乗るべき
  • 多分、畑薙第一ダム~静岡駅をタクシーで行くのが、時間的に一番いい。もっとも、マイカーで来ればそれが最良だけれど。
両側を山に囲まれた大井川
多分赤石ダム
こんな感じの所を林道が走っています。
赤崩?
崩れて下にたまった土砂
白樺荘にあった、井川の歴史文化を紹介するパネル。日本のこういう伝統的なお祭りって、どこも旧盆目掛けてやるから、見て回るのにも限界がありそう。
白樺荘から見た大井川上流。上の方は雲がかかって何も見えない。
てしゃまんくんというバスが来た。因みに、リースした車両で、運行はタクシー会社が委託を受けてた、はず。
バスに乗り換えても、暫くは深い山の中を走る。
椹島からバスで2時間、最初の集落がこの「小河内」。右側には落ちた吊橋が残っている。好きな人は好きそう。
集落内は茶畑だった。
小河内バス停
コンビニにまだ取って代わられていない雑貨屋
診療所前から見た井川町内。奥に見えるのは小学校。生徒数人らしい。
大井川鉄道井川線
細い10mの客車がつながっている。おもちゃにありそうなミニ列車といった感じ。
井川ダム。広大な井川湖を堰き止めている。
こっちは奥泉ダム。色が…。
深い渓谷の中を走っていきます。この辺りは、井川へとアクセスする静岡県道60号(南アルプス公園線)と離れているので、細い林道が線路に平行している以外、なにもないんですよね。
関の沢橋梁。「私鉄で」日本一の高さなんだけど、日本一がめっちゃ強調されていた。
相変わらず山の中
周りに何もないことで有名な尾盛駅。それでも列車は停まった。
アクセスする道もないです。
山の中
尾盛~接阻峡温泉にある、廃道となった遊歩道の吊橋。意外ととしっかりしているようにみえる。
接阻峡温泉
接阻峡温泉駅
列車はがたごとと進んでいきます。

静岡ならではの眺め。
長島ダムか?右側に、大井川鉄道の旧線のガーター橋などが見える。 
アプト式機関車の連結待ち。ここは観光客が大勢いた。
下の方に来ると、大井川も川幅が広くなってきます。
千頭駅、大勢の家族連れで賑わっている。個人的には、後ろの近鉄っぽい斜体がぼろすぎて哀愁誘ってるなあ…と思いましたけど。

全体のまとめ

  • 雨と霧にまみれた山行だった。
  • 小屋は誠にいいものである(ので、もうテントはいいかなあ…)。
  • 南アルプス南部は、本当にアクセスが悪い。小屋に泊まらないと椹島・二軒小屋~畑薙第一ダムのバスには乗れないし。もう満足したから行きたくない。
  • もしかしたら、以下の文献が参考になるかも。

悪沢岳 | 山岳通話エリア状況マップ http://nagano.docomo-de.net/area/sp/m0/ma/a0807.html
中部森林管理局/「平成19年度南アルプスの保護林におけるシカ被害調査」について http://www.rinya.maff.go.jp/chubu/policy/business/conservation/sika_higai_2008/
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